地域戦略ラボ

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イノベーションの空間的分業におけるポジショニング

イノベーションは空間的に分業されており、一つのイノベーションの創出のための学習活動は一つの行政圏域で完結するものではないです。つまり、イノベーションは領域的(Territorial)にも分業されています。

それぞれの分業されたイノベーション活動が連鎖されてネットワークが形成されているが、そのネットワークの中で地域の役割が異なっています。

イノベーション活動においてシーズの創出を行う地域もあり、要素技術の開発を担当する地域もあれば、量産製造に特化した地域もあります。商品やビジネスモデルの設計・開発を行う地域もあるし、プラットフォームとして知識を統合させる地域もあります。

例えば、アップルはシリコンバレーでは商品やビジネスモデルの開発を行い、量産は中国などで集中的に行っており、部品生産は日本・韓国企業などが行っています。

一般的には、要素技術を開発するだけより、技術を統合することにより、より付加価値の高い知識を生み出す可能性が高くなります。

しかし、知識の統合の最終形態である最終製品を担うことが必ずしも最も価値が高いことを意味するわけではありません。


イノベーションの価値連鎖において、利益幅の少ないプロセスを担う従属的なポジショニングではそこから生み出される富は少ないです。

また、最先端のハイテク分野だからと言って付加価値が高いとは限りません。

ハイテク分野でも価値連鎖において従属的な工程を担うのであれば利益は少ないです。

一方、ローテクでも独自性・希少性があればイノベーション・プロセスにおいて中心性を確保しやすく利益を得ることが出来ます。

つまり、発明から市場に至る価値連鎖の部分にある「ボトルネック」や「難所」をコントロールすることにより大きな利益を得る可能性もあります。

また、全体のコンセプトやビジネスモデルを設計することによっても利益を享受できます。

そのため、 イノベーションの空間的分業において、地域がイノベーションの経済的成果をより多く享受することを目指すのであれば、イノベーションの価値連鎖において優位なポジションを取ることが重要です。

また、当初はイノベーションの周辺的な位置づけを担っていても、イノベーションの価値連鎖を徐々に地域内で内製化して、アップグレードしていくことが求められます。