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まちづくりを取組む前に読んで戦略を考えよう『まちづくり戦略3.0』[読書]

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小林大輔(2021)『まちづくり戦略3.0』かんき出版

 

まちづくりの取組みが日本全国で行われています。しかし、それらの取組みの多くは成果を上げているとは言えない状況です。
そこで、著者はまちづくりを成功させるには、必要なアプローチがあると本書で示しています。

 

■本書から得られるもの
著者はいろいろなまちづくりを行ってきた体験に基づき本書を書いており、本書はまちづくりのプロジェクトを立ち上げようとしている人に対して、心構え、考え方、進め方を提示しています。
本書は、強調するポイントは太字であったり、緑色のマーカーが引かれてあったりするので、重要なポイントが何なのか要領良く読むことができます。

 


■著者のプロフィール
小林大輔
・株式会社SUMUS(スムーズ)代表取締役社長。新潟県高田市(現上越市)生まれ、その後は千葉県東金市で育つ。祖父は材木業、父は工務店を経営。法政大学経営学経営学科卒。経営コンサルティング会社を経て独立。
・2015年、株式会社SUMUSを創業。住宅メーカー、リノベーション会社を中心に経営コンサルティングを行い、500社以上のクライアントをサポート。
・地域そのものをリノベする「まち上場」を実現させるコンサルティング案件が多く、サービス継続率は96%と高い実績を誇る。しかも扱う地域は、大都市圏どころか県庁所在地でもなく、カネ、人、知名度が決して潤沢とは言えない地域ばかり。

 

■どのような本なのか
<目次>
第1章 弱者の正しい戦い方を、9割以上の人が知らない
第2章 小さなことから、大きなことへ…これが弱者の正しい戦い方
第3章 真の成功とは「上場」である
第4章 ステップ1 ソリューションの検討
第6章 ステップ3 場をつくり、運営をする
第7章 ステップ4 ルールをつくる

 

<本の概要>
著者が伝えたかったこととして、以下3点が挙げられます。
①地域は大きな課題を抱えています。しかし、それに真正面から取組むのではなく、自分が弱者だと認識、弱者に合った戦略をとる必要があります。
それがランチェスターの法則です。
ランチェスターの法則とは、簡単に表現すると、「大企業が参入していない分野を見つけて集中的に攻める(集中戦略)」「自社の強みを活かして勝てる分野で戦う(差別化戦略)」などを駆使し、大企業とは勝負しないで戦いを有利に進めていきます。つまり、弱者が強者に勝つためには一点突破していくしかないということです。著者は、まちづくりでは弱者のアプローチが重要だとしています。

 

②まちづくりの実践方法として4つのステップを提案しています。
【ステップ1】ソリューションの検討:プチ起業という発想をすれば、スタートを切りやすくなる
【ステップ2】人を巻き込む:NSNでファンを増やす。ファンをリピーターと仲間にかえていく
【ステップ3】場を作り、運営する:「集客数×非離脱率×客単価」の最大化で収益を出し、再投資を繰り返して成長させる
【ステップ4】ルールをつくる:短期目標と中長期目標を設定し、それを実現するルールで回していく


③まちづくりのゴールは金銭的価値を上げていくことであり、著者はそれを「まち上場」と称しています。そして、「まちの上場」を実現するための8か条をあげています。
1)スモールスタート・スモールゴール
2)スローディベロップメント
3)多様性を重視
4)まちの価値を計算する
5)利益の再投資
6)メディアを持つ(SNSやオウンドメディア、動画の活用)
7)意思決定ルールをつくる(コアメンバーとサポートメンバーをつくりつつ)
8)原価志向から抜け出す(原価思考から価値思考へ)

 

■感想
・地方圏の市の中には、町村ではなく市のステータスなので自分のまちは都市であると誤認している自治体が多くあります。特に合併市町村は人口規模が大きくなったので、集積もないのに都市型の施策を展開しがちです。


・まちづくりとは、人々を呼び込むことであり、ファンづくりであり、結局コミュニティづくりなのだということがわかります。


・著者は実業家なので、本書に書いてあるプロジェクトの進め方はまちづくりだけではなく、普通の事業でも通用する考え方です。

 

■こんな人におすすめ
まちづくりを始める前に、その取組みが正しいかどうか、自分の考えを整理してみたい人におすすめです。


■まとめ
・本書は、まちづくりのプロジェクトを立ち上げようとしている人に対して、心構え、考え方、進め方を提示しています。
・著者の実体験に基づいた内容なので、机上の空論ではなく説得力があります。
・著者の提案する4つのステップにのっとってプロジェクトを進めて、たとえ上手くいかなくても、大やけどはしないでしょう。なぜなら、著者は小さく始めて大きく育てようとの戦略をとるべきであるとしているからです。