地域戦略ラボ

地域づくり・まちづくりに興味がある人、したい人のための学びのメディア

地域経済

まちづくりを取組む前に読んで戦略を考えよう『まちづくり戦略3.0』[読書]

小林大輔(2021)『まちづくり戦略3.0』かんき出版 まちづくりの取組みが日本全国で行われています。しかし、それらの取組みの多くは成果を上げているとは言えない状況です。そこで、著者はまちづくりを成功させるには、必要なアプローチがあると本書で示し…

地域創生に携わっている人たちのためのガイドブック『地域づくりのヒント』[読書]

牧瀬稔(2021)『地域づくりのヒント』社会情報大学院大学出版部 2014年からの安倍内閣の地方創生政策から約8年が経ちます。地域では多くの人々が地域づくりに携わっています。しかし、地域づくりに成功しているところもありますが、多くの地域では成果をな…

地域経済のレジリエンスって何?[解説]

“レジリエンス”という言葉を聞いたことがありますか?レジリエンスとは、回復力があるとか、抵抗力があるなどという意味で、最近では政策用語としても使われる言葉です。 欧米ではレジリエンスのある地域経済の構築を目指した取り組みが積極的に展開されてい…

地域イノベーションとは何か?[まとめ記事・解説]

今まで地域イノベーションについて、いろいろと記事を書いてきました。今回はそれらを取りまとめて、地域イノベーションについて概括していきたいと思います。 《目次》 ■地域イノベーションとは何か ■地域イノベーションの研究動向 ■地域イノベーションの事…

地域づくり・地域経済について学びたい人におすすめの新書12選[読書]

大学で地域経済学・経済地理学を教えています。 地域活性化について、例えば地産地消や観光振興、ふるさと納税など次々と政策が打ち出されますが、学生に対してはそれが地域経済にどのような影響を与えるのか、地域経済の構造と意味を理解してほしいと考えて…

西条市における移住・定住促進ための地域ブランディング

愛媛大学社会共創学部の我がゼミ3年生は、1年間西条市における人を呼び込むための地域ブランドについて調査研究してきました。 その結果をまとめた報告書が完成いたしました。 愛媛県西条市は宝島社刊行の雑誌『田舎暮らしの本』で「2021年版 住みたい田舎ベ…

イギリスの意欲的な (?) 地域政策が発表されました。

イギリスのジョンソン内閣は、イギリスのすべての地域をレベルアップさせるという 地域政策に関する意欲的な白書を2月2日に発表しました。 <目次> <本白書の内容> <イギリスをレベルアップさせる12のミッション(到達目標)> <イギリス(イングランド)…

地域でイノベーションを起こしやすい環境づくり:英国ニューカッスルの取組み

このブログでは、最近イノベーションハブについて紹介しましたが、地域イノベーションの空間づくりの実証研究としてイギリスのニューカッスルで行ったフィールド調査の結果をとおして具体的に見ていきたいと思います。 なお、本編は「イノベーション空間の整…

クラスター政策を見直してみませんか。

アメリカではクラスター政策が復活するらしいです。 米国のブルッキンズ研究所のレポート では、米国商務省経済開発局はコロナ禍の復興政策の一つとして、新たなクラスター政策BUILD BACK BETTER REGIONAL CHALLENGE(創造的復興のための地域の挑戦)を紹介…

産業政策における地域の重要性

ヨーロッパ(特にイギリス)では産業と地域の活性化を”レベルアップ”というコンセプトで展開しています。それを産業政策の地域的展開と捉えています。従来の地域産業政策であると、地場産業やローテク産業などが含まれますが、国の産業政策としてハイテク産…

平成30年間に製造業はどのように変化したか(産業分野編)

平成30年は失われた20年とも30年とも言われています。その中で、日本の強味であった製造業も競争力を喪失したと言われています。そこで、今回日本の製造業が30年間で具体的にどのように変化したかを見ていきたいと思います。 (データは経済産業省の工業統計…

平成30年間に製造業はどのように変化したか(都道府県編)

前回に引き続きまして、平成の30年間においての製造業の変化を都道府県別に見ていきます。 ①都道府県別の事業所数、従事者数、出荷額、付加価値額の変化 平成期における都道府県別の製造業の変化を見ると、事業所数は47都道府県すべてで減少しています。従…

すべての地域・都市にイノベーション政策を広げよう(OECD報告書)

OECDでは2020年10月に「すべての地域・都市にイノベーション政策を拡大しよう:Broad-based Innovation Policy for All Regions and Cities」という179ページの報告書を発表しました。その報告書は最近の欧米の地域イノベーション政策の考え方を表しています…

地域活性化のためのイノベーション:ローカル企業と公設試による骨まで食べられる魚干物の開発

以前のブログ(および拙著『イノベーションの空間論』)で地域イノベーションを ①-A 技術基盤構築型地域イノベーション(ハイテク型)②-B 技術基盤構築型地域イノベーション(ローテク型)③リビングラボ型地域イノベーション④地域埋め込み型社会イノベーショ…

地域のマーケティングについて考えてみる

昨年イギリスの自治体の都市計画部署を訪問した際に、「市役所に勤めるのに今後必要な能力はどのような能力ですか?」という質問をした際に、「マーケティング能力」という答えがありました。 そのことがありましたので、最近改めてコトラーら(1996)の『地…

製造業VSサービス業ではなくデジタルVS非デジタルで考えてみる。

平成の30年間において日本の製造業は縮小している。欧米諸国も国内総生産における製造業の比率を大幅に下げています。また、1995年のWindows95の発売に代表されるようにITやインターネット産業などのサービス業が発展してきています。 そのため、先進諸国に…

地域政策において場所性を考慮すること(場所基盤)の必要性

地域とは当然、千差万別であり、一つの政策がすべての地域に適用可能なわけではない(One size does not fit all)という議論は以前からされています。 特にこの考え方はイノベーション政策に顕著であり、地域のポテンシャルが違うので、政策もそれに合わせ…

中国の台頭としてBATHについて詳しく分かる動画集

前期の主に1年生を対象とした共通教育「地理学入門」の1コマで「中国の台頭」について取り上げました。 大学生の中国観は意外と古臭く、「日本より遅れているのでは」「パクリ品が多い」などのイメージが多かったです。そこで、バイドゥ、アリババ、ティンセ…

改めて、いま必要なのはテクノロジーイノベーションである。

日本ではイノベーションは技術革新を訳されてきて、それがイノベーションに対する誤解を生んだと言われています。確かに、イノベーションは技術革新だけを指すものではありません。技術に由来しないビジネスモデルや制度や社会的なイノベーションもあります。…

[読書レビュー]知識経済における地政学について考える

『Geopolitics of the Knowledge-based Economy』はフィンランド・ヘルシンキ大学地理学部のサミ・モイシオ教授の著書であり、2019年にRegional Study Associationの著作賞を受賞した本である。 知識経済を地政学の視点で論じるにあたり、2つのアプローチが…

地域格差は是正されるのか?

地域格差の是正について、高度成長期は、日本全体が経済成長する中で、産出された富の分配として富める地域から富めない地域へ経済的支援という側面がありました。 しかし、国全体が経済成長していない中で、富を分配すること自体が難しくなっていっています…

地域による地域のための地域政策

欧米の地域政策の最近のキーワードとして"place-based approach"、つまり場所をもとにした政策アプローチが挙げられます。 今までの地域政策は中央政府によるトップダインの政策が多く、”One size fit all”として、画一的なアプローチが多かったですが、それ…

ヨーロッパにおける地域間格差(その2)

昨日公表したJournal of Economic Geographyの論文をもとに、その続きとしてヨーロッパにおける地域間格差への政策アプローチについて紹介したいと思います。 (論文) Iammarino, S., Rodriguez-Pose, A. and Storper, M. (2019) Regional inequality in Eu…

ヨーロッパにおける地域間格差(その1)

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの地理学部の看板教授3人が昨年Journal of Economic Geographyで公表した論文をもとにヨーロッパにおける地域格差の現状について紹介したいと思います。 Iammarino, S., Rodriguez-Pose, A. and Storper, M. (2019) …

人口減少社会において持続可能な地域をつくれるのか?

『地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書)』 が書き示すように、日本の地域は人口減少により将来消滅すると言っても決して驚くような言説ではなくなりました。 下図は愛媛県八幡浜市の人口動態を示したグラフです。1950年に7.3万人だった人口が20…

データで見る東京一極集中:地方創生総合戦略1期の検証

昨日のWeb News Business Japanに「なぜ広島県が人口流出ワースト1位…」という記事があり、気になりましたので、データーソースの住民基本台帳人口移動報告2019年(令和元年)結果にあたってみました。 まず、広島県の状況を見る前に、内閣府の「まち・ひと…

デトロイトに見る産業都市の盛衰

20世紀を代表する産業都市としてアメリカ・ミシガン州のデトロイトが挙げられる。デトロイトは自動車産業の興隆とともに発展していった町である。デトロイトの興隆から衰退の軌跡について見ていきたいと思います。 1. デトロイトとフォードの発展 自動車産…

地域イノベーションの課題 その1

地域イノベーションの課題として、大きく分類して(1)イノベーションのインパクトおよび地域への波及 (2)イノベーションの領域とマネジメント が考えられます。 本日は(1)イノベーションのインパクトおよび地域への波及 について考えてみたいと思い…

テックシティの興隆 その2

2月8日のブログでも書きましたが、アメリカを中心にテックシティへの富の集中が進んでいます。 最近、イギリスLSEのSimona Iammarino教授らがデジタルテクノロジー企業の富の偏在が地理的に与える影響について分析していますので、ここに簡単に紹介します。 …

アメリカのテックシティーの興隆

昨年の12月にアメリカのBrookings 財団からアメリカの成長拠点であるテックシティーの状況に関するレポートが公表されました。 アメリカのイノベーション産業は活況を呈しており、その様な産業が集積しているテックシティ(イノベーション・ハブ)も大きく成…