地域戦略ラボ

地域づくり・まちづくりに興味がある人、したい人のための学びのメディア

地域イノベーションにおける経路依存と経路棄却

イノベーションが継続的に創出される地域となるためには、地域の組織が成功体験を積み重ねて経路依存性を構築することが必要です。

しかし、その経路依存性とは地域の組織間の関係が固定化されてしまうとマンネリ化し、新たな知識やアイデアが生み出されにくくなり、逆に発展性が阻害されてしまうことにつながります。そのため経路依存性を打破することが必要となります。

 

人や組織が継続的に成長していくためにはダブルループ学習として学習と学習棄却のサイクルをスパイラルに回していくことが必要なのと同様に、地域が継続的にイノベーションを創出させ成長していくに為には、イノベーションのための経路を創造させながらもその経路に拘泥せずに経路を棄却して新たな経路を創造し続けることが必要です。

具体的には、他所から新たな知識や新規メンバーなどを取り入れ、新たな連携関係を構築することなどです。


つまり、地域イノベーションは地域という領域性に強く依存しているが、同時に、脱領域した空間を如何にネットワークとして地域内に取り込み関係性を構築して、成果を地域に埋め込んでいくことが重要となります。

イノベーションにとって、地域は関係構築を促進し、密なコミュニケーションを行う場という意味で促進要素であると同時に、強すぎる地域主義(ローカリズム)により関係構築を地域内のステークホルダーに拘れば活動が停滞していくという意味で制約要素ともなりえます。

 

イノベーションにおいて地域が重要であるということは、必ずしも地域のステークホルダーおける関係構築に注力することを意味していません。

イノベーションが継続的に創出される地域とはローカルな文脈を大事にしながら、積極的にグローバルとのつながりを持っているところです。

地域の主体性を保ちながら、地域外の資源を取り込むことによって既存の経路を棄却し、新たな経路を創造することが肝要と言えます。

 

 

野澤一博(2020予定)『イノベーションの空間論』一部改筆