イノベーションのための学習と空間 (5)コミュニケーション空間としてのイノベーション・コミュニティ
イノベーションのための学習と空間として
(4)イノベーションの空間的分業 について見てきました。
今回は、(5)コミュニケーション空間としてのイノベーション・コミュニティについて考えていきます。
グローバルネットワーク・知識経済社会において、イノベーション・ネットワークの空間は、国の境界を越えてグローバル空間で分業されています。
しかし、イノベーション創出活動を新たな知識の探索・創造・活用と見た時に、空間的に分業状態であるネットワークにおいて、新たな関係を構築し集合させる機能としての物理的空間が必要となっています。
イノベーションはチームの対話および協働によってなされており、イノベーションの創出において必要なことは、人々とのつながりの場です。
また、オープン・イノベーションとは単に企業が外部から知識を獲得し、イノベーションを効率的・経済的に創出するだけではなく、多数の異なった分野の組織・人々が協力しあう多層的にコラボレーションが行われていることです。
つまり、イノベーションを継続的に創出させるためには、迅速にチームを形成し、イノベーション・コミュニティを作る必要性があります。
イノベーション創出のためのコミュニケーションが起こす空間は3つの層から構成されています。
1層目は、コミュニケーションの基盤となる、言葉や会話が通じるという意味において文脈としての言語や価値観が共有される層です。
2層目は、物事を判断したり行動したりする際に基準とする考え方としての規範や慣習などの制度の及ぶ範囲としての層です。
3層目は、共感や情熱などをつくり、伝える雰囲気・環境の層である。人と人とのコミュニケーションが起こるには、心理的な共感や情熱などが必要です。
そして、イノベーションのための文脈、制度、雰囲気・環境が層となり、それらの3層が内包される形でイノベーションのコミュニティ空間が形成されています。
野澤一博(2020予定)『イノベーションの空間論』一部改筆