地域戦略ラボ

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イノベーションのための学習と空間(4)イノベーションの空間的分業

イノベーションのための学習と空間として

(1)拡散する知識と凝集する知識

(2)イノベーションの価値連鎖  

(3)関係構築のための信頼と評判 について見てきました。

今回は(4)イノベーションの空間的分業 について考えていきます。

 

1つのイノベーションの創出はいくつものプロジェクトにまたがって展開されてます。そのことは、イノベーション分業されたプロジェクトが連鎖・統合されて創出されることを意味します。

 

地域の技術シーズをもとにした実用化の取組みでのイノベーションの空間的構成を見ると、地域内では大学を中心に基礎研究が行われ、また部材の製造が行われていました。地域外では、応用研究としてのアプリケーション開発ではキープレイヤーとして地域外企業が多く参画しており、物質の製造では製造・販売経験のある地域外企業が参加して行われているなど、イノベーションのプロジェクトは分業で行われています。

つまり、イノベーション創出プロセスの空間とは必ずしも一つの地域内で完結したものではなく、イノベーション活動はいくつかの場所で行われていました。

よって、イノベーションのプロセスは、多様な場所において生み出されたという意味において空間的に分業されていると言えます。

 

そのイノベーションの分業において、地域の機能は異なっているとされています。

具体的には、イノベーション活動の中心となる中核地域、活動の部分を担う周辺地域、その両者の中間地域の3つに分けられます。

一般的に言って、イノベーション中核地域とは、大企業や優れた大学・研究機関が集積する大都市であり、人材や資本が世界的にマグネットのようにあつまるイノベーションのエコシステムを形成している地域です。

周辺地域とは、自立的なイノベーションを創出させることは困難であるが、要素技術開発などで中核地域と連鎖する地域です。

中間地域とは、中核地域ほどはイノベーション・エコシステムが世界的に評判を得ているわけではないが、特定分野に強みがあったり、中核地域への成長段階であったりする地域です。

そして、地域の機能によって創出される付加価値が違うため、周辺地域や中間地域に位置する地域はその機能をアップグレードさせることが求められます。

 

 

野澤一博(2020予定)『イノベーションの空間論』一部改筆