地域戦略ラボ

地域経済や地域マネジメントに関していろいろな事を考えていきます。

産業政策における地域の重要性

ヨーロッパ(特にイギリス)では産業と地域の活性化を”レベルアップ”というコンセプトで展開しています。それを産業政策の地域的展開と捉えています。従来の地域産業政策であると、地場産業やローテク産業などが含まれますが、国の産業政策としてハイテク産…

[読書メモ]中国のイノベーションについて考えてみる

李智慧『チャイナ・イノベーション(2018)』『チャイナ・イノベーション2(2021)』日経BP について紹介しながら、中国のイノベーション、米中対立、日本の行方について考えてみる。 《目次》 中国のデジタル強国戦略 BATHの誕生 米中対立 日本のイノベーシ…

平成30年間に製造業はどのように変化したか(産業分野編)

平成30年は失われた20年とも30年とも言われています。その中で、日本の強味であった製造業も競争力を喪失したと言われています。そこで、今回日本の製造業が30年間で具体的にどのように変化したかを見ていきたいと思います。 (データは経済産業省の工業統計…

平成30年間に製造業はどのように変化したか(都道府県編)

前回に引き続きまして、平成の30年間においての製造業の変化を都道府県別に見ていきます。 ①都道府県別の事業所数、従事者数、出荷額、付加価値額の変化 平成期における都道府県別の製造業の変化を見ると、事業所数は47都道府県すべてで減少しています。従…

すべての地域・都市にイノベーション政策を広げよう(OECD報告書)

OECDでは2020年10月に「すべての地域・都市にイノベーション政策を拡大しよう:Broad-based Innovation Policy for All Regions and Cities」という179ページの報告書を発表しました。その報告書は最近の欧米の地域イノベーション政策の考え方を表しています…

地域活性化のためのイノベーション:ローカル企業と公設試による骨まで食べられる魚干物の開発

以前のブログ(および拙著『イノベーションの空間論』)で地域イノベーションを ①-A 技術基盤構築型地域イノベーション(ハイテク型)②-B 技術基盤構築型地域イノベーション(ローテク型)③リビングラボ型地域イノベーション④地域埋め込み型社会イノベーショ…

「地域経済学」を学習するための本5選(その2)

過去の記事でも紹介しましたが、大学で「地域経済学」について講義しています。講義では地域経済に関するリテラシーを向上させるためにいろいろな本を紹介しています。 《今回紹介する本》 曽我謙悟(2019)『日本の地方政府』 今井照(2017)『地方自治講義…

イギリスの地方自治における権限移譲とEU離脱

日本地理学会のE-journal GEOに拙稿「北東イングランドにおける権限移譲と地域の変容」が公開されました。 イギリス、特にイングランドの地方自治制度は保守党と労働党の政争の具にされることが多く、中央集権の中で、中央政府が地方自治体に対して権限を吸…

「松山都市圏を創造都市にかえる」をテーマにリモート講義を行いました

2020年第3クウォーター(10月、11月)の「産業立地論」の授業は「松山都市圏を創造都市にかえる」とテーマに講義を行いました。 授業登録者は社会共創学部の3・4年生46名でした。 本講義の目的は、知識の習得よりも、1年から3年までで学んだ知識を整理統合…

地域のマーケティングについて考えてみる

昨年イギリスの自治体の都市計画部署を訪問した際に、「市役所に勤めるのに今後必要な能力はどのような能力ですか?」という質問をした際に、「マーケティング能力」という答えがありました。 そのことがありましたので、最近改めてコトラーら(1996)の『地…

製造業VSサービス業ではなくデジタルVS非デジタルで考えてみる。

平成の30年間において日本の製造業は縮小している。欧米諸国も国内総生産における製造業の比率を大幅に下げています。また、1995年のWindows95の発売に代表されるようにITやインターネット産業などのサービス業が発展してきています。 そのため、先進諸国に…

ヨーロッパのイノベーション首都2020にルーベン(ベルギー)が選定されました。

EUでは2014年からヨーロッパにおける先進的なイノベーションの取組みを行っている都市地域をi-capital(首都)として表彰しています。今年はベルギーのルーベンが選定され、100万ユーロを獲得しました。 ルーベンはルーベンカトリック大学やIMECなどの学術・…

地域政策において場所性を考慮すること(場所基盤)の必要性

地域とは当然、千差万別であり、一つの政策がすべての地域に適用可能なわけではない(One size does not fit all)という議論は以前からされています。 特にこの考え方はイノベーション政策に顕著であり、地域のポテンシャルが違うので、政策もそれに合わせ…

中国の台頭としてBATHについて詳しく分かる動画集

前期の主に1年生を対象とした共通教育「地理学入門」の1コマで「中国の台頭」について取り上げました。 大学生の中国観は意外と古臭く、「日本より遅れているのでは」「パクリ品が多い」などのイメージが多かったです。そこで、バイドゥ、アリババ、ティンセ…

コロナ禍において大学生はプライバシーをとても重要視している

現在のコロナ禍において、感染者を増やさないことと、経済を回すことの両立が求められています。また 、緊急事態宣言などのような強制力をもって人々の行動を制限することが難しくなってきています。そこで、前期の授業で大学生にアンケートを取り、大学生の…

『イノベーションの空間論』の出版にあたって

『イノベーションの空間論』はネットではもう発売になっておりますが、本の奥付では4月3日が発行日となっております。そこで拙著の出版に際し、執筆の動機、目的について以下に簡単に述べたいと思います。 21世紀において、国や地域が繁栄していくためには、…

改めて、いま必要なのはテクノロジーイノベーションである。

日本ではイノベーションは技術革新を訳されてきて、それがイノベーションに対する誤解を生んだと言われています。確かに、イノベーションは技術革新だけを指すものではありません。技術に由来しないビジネスモデルや制度や社会的なイノベーションもあります。…

この激動の社会における学習について考える。

私の勤務している大学では4月8日から授業が開始される予定ですが、従来通りの内容(コンテンツ)で教えることが、学生にとって本当に意味があるものかどうか逡巡しています(当然、時代の変化にかかわらず変わらぬ価値のある科目もあると思いますが)。 特に…

[読書レビュー]知識経済における地政学について考える

『Geopolitics of the Knowledge-based Economy』はフィンランド・ヘルシンキ大学地理学部のサミ・モイシオ教授の著書であり、2019年にRegional Study Associationの著作賞を受賞した本である。 知識経済を地政学の視点で論じるにあたり、2つのアプローチが…

イノベーションのつくり方はあるのか?

イノベーションとは、新たな技術や概念、ビジネスモデルを用いて財やサービスが市場や社会で受け入れられることである。それは個人や一企業がコントロールできるものではないので、ある意味偶然性が必要である。 そこで、そのようなイノベーションが計画的に…

アフターコロナ社会を思い巡らす(1)

今回の新型コロナウイルスの蔓延は全世界に広がり、世界史に残るような大きな出来事となっています。 今回の出来事は今後文明的な変換をもたらすでしょう。 その中で多くの人が新型コロナウイルス後の世界を想像し始めています。 朝日新聞ヨーロッパ総局長の…

地域イノベーションにおける経路依存と経路棄却

イノベーションが継続的に創出される地域となるためには、地域の組織が成功体験を積み重ねて経路依存性を構築することが必要です。 しかし、その経路依存性とは地域の組織間の関係が固定化されてしまうとマンネリ化し、新たな知識やアイデアが生み出されにく…

イノベーションの空間的分業におけるポジショニング

イノベーションは空間的に分業されており、一つのイノベーションの創出のための学習活動は一つの行政圏域で完結するものではないです。つまり、イノベーションは領域的(Territorial)にも分業されています。 それぞれの分業されたイノベーション活動が連鎖…

地域におけるイノベーション

地域におけるイノベーションと言いながらも、それは「Innovation in a region」を意味し、そのイノベーションは必ずしも地域のモノとは限らない。地域のためのイノベーション「Innovation for (or of) a region」とは別モノといえます。 イノベーションの活…

[読書メモ]アイデアを実現させる建築的思考術(アーキテクチャル・シンキング)って何?

西澤明洋(2019) 『アイデアを実現させる建築的思考術』 日経BP 世の中、シンキングばやりです。デザイン・シンキング、ロジカル・シンキング、クリティカル・シンキング。 一体、どれがどれで、どのように使えばいいのかわからなくなります。 この本は、新…

企業におけるイノベーションのための地域

先日までは、イノベーションの創出のために地域が重要であるとの議論を見てきました。 しかし、大企業のイノベーションの創出活動では必ずしも地域的な要素を見受けるとは限りません。そこで、企業の視点からイノベーションのための地域や場所の利点について…

イノベーションにおける地域(3)多層的空間としてのイノベーション圏

先日はイノベーションにおける地域としてイノベーションにおける機能・環境空間としての地域について考察しました。 本日は多層的空間としてのイノベーション圏について考えます。 イノベーション創出のプロセスを俯瞰すると、知識の調達においてその空間は…

地域格差は是正されるのか?

地域格差の是正について、高度成長期は、日本全体が経済成長する中で、産出された富の分配として富める地域から富めない地域へ経済的支援という側面がありました。 しかし、国全体が経済成長していない中で、富を分配すること自体が難しくなっていっています…

地域による地域のための地域政策

欧米の地域政策の最近のキーワードとして"place-based approach"、つまり場所をもとにした政策アプローチが挙げられます。 今までの地域政策は中央政府によるトップダインの政策が多く、”One size fit all”として、画一的なアプローチが多かったですが、それ…

イノベーションにおける地域 (2)イノベーションにおける機能・環境空間としての地域

先日はイノベーションにおける地域としてイノベーションの拠点性について考察した。 本日はイノベーションにおける機能・環境空間としての地域について考える。 イノベーションのための知的集積拠点とは単独で存在するものではありません。人々や企業が研究…