地域戦略ラボ

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イノベーションにおける地域 (1)イノベーションの拠点性

以前のブログのイノベーションのための学習と空間では、イノベーションが継続的に創出されるためには、その活動の基盤となるイノベーション・コミュニティが必要であるということについて見てきました。そこで本日以降は、イノベーション・コミュニティを構成する要素であるイノベーションの拠点とその活動を支える機能・環境空間としての地域について見ていきます。


イノベーションのための知的集積拠点とは、ただ単に研究者が集まって研究開発を行っている学術的な場所を指すものではなく、実用化を目的として、スケールアップや評価・分析、人材育成、標準化を中心とした活動を行う場所です。

そこでは、異なったバックグラウンドを持つ組織の関係を触媒的にとりもつ仕掛けとしての間組があることが多いです。異なる組織の関係構築機能として属人的なブローカーより、組織である中間組織のメリットとしては以下3点あげられます。

第1に、組織は継続性が高いため取組みに対する信頼を得やすい

第2に、異なる組織のマッチングだけでなく体系的に情報やファンドの提供などの様々なサービスを提供することが出来る

第3に、組織として冗長性があるほうが、思いがけない出会いをもとにした関係構築できやすい 点です。

また、中間組織は、そこを一つの基盤として、多くの組織が出入りするプラットフォームに発展する可能性が高まります。このプラットフォームはネットワークという形態をとり、参加者が増加することでプラットフォームとしての価値が向上します。


現在、持続可能な開発目標(SDGs)などに関する複雑な社会課題に取り組むために、多様な分野のリソースを組織化する必要があります。

そのために異なるステークホルダーが集まるためのプラットフォームの形成が目指されています。

そこでは、技術的のみならず社会的な課題が持ち込まれて、リビングラボとしてイノベーションの実験場となる場合もあります。

各地域の戦略として、研究開発拠点の設置だけではなくリビングラボの提供まで行うかというと、スマートシティ高齢化社会への対応などの社会課題解決型のイノベーションは社会実装まで行ってはじめてイノベーションが結実するという特性をもっているためです。

さらに、イノベーションの実装における活動を集め、イノベーションの価値連鎖を地域に埋め込みイノベーションの果実を地域に吸収しようというためでもあります。


このようなプラットフォームを具備したイノベーションのための知的集積拠点は、空間的要素、組織的要素、制度的要素、機能的要素から構成されています。

空間的要素とは、文字通り拠点としての物理的空間である。大学や企業が存在し、そこに属する人々が活動する空間です。ハイテク人材は、もともと流動性の高い性質を持っているが、そのような人材を誘致・定着させるためには、生活の質を高めるなどの魅力を作ることで、地域への定着を図り、労働市場を地域化することが求められます。

組織的要素として、拠点とは一つの組織を意味するものではなく、大学や研究機関、企業が周辺に分散している組織の集合体の場合もあります。大学や研究機関、中間組織、企業など様々な組織が有機的に地域内でつながれている。

制度的要素とは、公式な制度としては地域内の協働的な学習活動を促進させるための共同研究支援施策などがあげられます。慣習や規範などの非公式な制度としては、起業活動への指向性や、地域内での協調的な態度などがあげられます。

機能的要素とは、拠点として学習活動を盛んに行っていくためには、組織間や人々をつなげるという重要な役割があります。また、卓越性を確立するためにブランドを作るなどの機能も必要となります。