地域戦略ラボ

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イノベーションにおける学習と空間 (2)イノベーションの価値連鎖

先日は知識の拡散性と凝集性についてみてきました。

今回はイノベーションの価値連鎖について考えてみたいと思います。


イノベーション知識の創造と連鎖として捉えた場合、イノベーションとは一つのアイデアやコンセプトの着想からプロダクト・サービスの販売まで、つまり、研究、開発から量産までの連続的なプロセスを経て具現化されます。

言い換えると、イノベーション技術シーズの商業化に至る価値連鎖として捉えてみることができでしょう。

 

例えば製造業でのイノベーションについて考えていくと、イノベーションの価値連鎖は、研究→開発→量産、部材→部品→最終製品という直線的(リニア)に展開されるのではなく、知識創造の層(研究→開発→量産)と製品創造の層(部材→部品→最終製品)の2つの層が重なり合い、様々な知識が創造・統合されています。

例えば、研究の段階で科学的原理や物性などの科学技術に関する知識、量産の段階では品質や調達に関する生産に関する知識などが創造・統合されてことによりイノベーションが創出されます。

それら工程では共同研究プロジェクトなどの形態により知識の交換・創造を行っていた。そのようなプロジェクトを大学の研究者はパッチワークのようにつなげていました。

つまり、科学技術型イノベーションの特徴は期間限定のプロジェクト型共同研究の連鎖によるものと言えます。


工業経済においては、生産から販売までのつながりとそのリードタイムを短くすることが問われていたが、知識経済においても、製品トレンドの移り変わりは早く、研究開発から生産、販売までのリードタイムを短くし、市場に早く製品やサービスを提供することが求められています。

そのためには、生産のためのサプライチェーンを素早く構築できるようにするだけでなく、知識創造という局面において諸組織間の学習関係を早急に構築することが問題となってきます。

つまり、イノベーション創出のためには、迅速に知識をもった組織および人がチームをつくり学習を行うが必要であり、実践コミュニティ(CoP)などのイノベーション・コミュニティを迅速に形成できることがより重要になってきています。

イノベーションのためには、多様な組織や人材を集め関係構築を容易に図れる社会環境が必要となっている。

 

野澤一博(2020予定)『イノベーションの空間論』一部改筆