世界のテックシティー(イギリス編)
世界にはハイテク、特にデジタル技術をもとにした新しいビジネス活動が集積している都市・地域があります。
以下、世界のテックシティーについて紹介していきたいと思います。
まずは、イギリス編
イギリスには優れた学術機関があります。2020年THEの世界大学ランキングでは、オックスフォード大学(1位)、ケンブリッジ大学(3位)、インペリアル・カレッジ・ロンドン(10位)、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(15位)、キングス・カレッジ・ロンドン(36位)、マンチェスター大学(55位)などの大学があります。
そのうち5つの大学が集積しているロンドンーオックスフォード-ケンブリッジは、イギリス経済の成長エンジンとして認識されており、黄金(ゴールデン)のトライアングルと呼ばれています。
ロンドンは、イギリスの政治経済の中心地ですが、研究開発やハイテクビジネスの中心地でもあります。
テックシティーという名称をはじめに使い始めたのは、East London Techcityです。East London Techcityは、開発があまり進んでいなかったオールドストリート周辺に米国のFacebookやCisco、Googleなどが集積し、ロンドンの大学だけでなく、ケンブリッジやオックスフォード大学出身者も集まり、ICT系、Web系、広告・デザイン系、Fintech 系のベンチャーの起業が進みました。
最近では、キングスクロス駅周辺の再開発で、同じくICT系、Web系、広告・デザイン系、Fintech 系の企業の集積が進んでいます。Googleは2018年にロンドンオフィスをキングスクロスに移転させ、約7000人が働いています。
キングスクロスにはDigital Catapultも立地しています。
ロンドン西部のホワイトシティにはインペリア・カレッジ・ロンドンのサテライトキャンパスがImperial Westというイノベーション地区として再開発されています。元々はBBCのスタジオがあり、”Top of Pops”などが撮影されていたそうです。
また、タワーブリッジのそばにあるキングス・カレッジ・ロンドンと関係の深いGuy's病院にはCell & Gene Therapy のカタパルトセンターがあります。イギリスは医薬関係の研究が進んでいて、ロンドンにも医療機関が集積していますが、創薬に関するクラスターは、ロンドンに集中しているというより、ケンブリッジ、オックスフォードのゴールデン・トライアングルにあると言えます。
イギリス政府は2011年から、イノベーションを加速させるためのプラットフォームとしてカタパルト センターを全国に設置しています。新たな設置や統廃合を繰り返し2020年現在、10の分野のセンターがあります。
その中で、High Value Manufacturingのカタパルトは7つのブランチセンターで構成されています。カタパルトは主に大学の中に設置されているものが多いです。
<全国のカタパルトセンター>
1. Cell & Gene Therapy – October 2012 – at Guy's Hospital, London
2. Connected Places – April 2019, formed by merging
3. Digital – June 2013 – in Kings Cross, London. Projects include
4. High Value Manufacturing – October 2011
5. Offshore Renewable Energy – March 2013 in Glasgow and Blyth, Northumberland.
6. The National Renewable Energy Centre (Narec) at Blyth, Northumberland
7. Satellite Applications – December 2012 – at Harwell Science and Innovation Campus, Oxfordshire
8. Energy Systems – April 2015 – in Birmingham
9. Medicines Discovery – July 2015 – at Alderley Park, Cheshire
10. Compound Semiconductor Applications – 2016 – in Cardiff
<High Value Manufacturingのセンター>
1. Advanced Forming Research Centre – at the University of Strathclyde
2. Advanced Manufacturing Research Centre – University of Sheffield
3. Centre for Process Innovation – Redcar, Sheffield and Darlington
4. Manufacturing Technology Centre – near Coventry
5. National Composites Centre – at Bristol and Bath Science Park
6. Nuclear Advanced Manufacturing Research Centre – University of Sheffield
7. Warwick Manufacturing Group – University of Warwick
ロンドン以外で、テックシティーとなりえるのはマンチェスターと言えます。
マンチェスター大学では、Andre Geim教授とKonstantin Novoselov教授が2004年にグラフェンを発見し、2010年にノーベル物理学賞を受賞したことを契機として、2013年に国立グラフェン研究所を設置しました(建物竣工2015)。
マンチェスター大学とマンチェスター市では、グラフェンを含めたハイテクイノベーションの創出を目指して、大学を中心とした地区をOxford Road Corridorと命名し、イノベーション地区の形成を目指しています。
国立グラフェン研究所の他にもいくつかグラフェン関連の研究センターがあり、マンチェスターはグラフェンを中心にイノベーション都市への変貌を企てています。