大学を殺すのは誰か?
大学に対する不満が大きく論じられています。
特にYou tube界隈ではホリエモン、イケダハヤト、マナブ、岡田斗司夫、ひろゆき などによる大学不要論が大きく展開されています。
彼らの主張の多くは、大学は時代に合っていないオワコンである。自分たちも大学で特に有意義であったという思い出がないというものです。
この2月22日、23日もTwitterでは橋本徹の国立大学解体の主張が反響を呼びました。
国立大学の教授連中は口を開けは運営交付金を増やせ!博士号取得者の雇用を守れ!しか言わない。今の日本の国立大学の文系授業は最低レベル。大学をもっと絞ってちゃんと授業のできる教授を選別すべき。法学系なんて全教授がかかっても伊藤塾の伊藤真氏一人にかなわない。
— 橋下徹 (@hashimoto_lo) February 22, 2020
少子高齢化時代、国立大学は解体的再編をしろ! 博士合取得者は高給取りになれるような人材になれ!と言ったら、国立大学関係者と思われるバカが騒ぎ出した。国立大のあの学校数で約1兆1000億円の運営交付金など国立大は甘えすぎ。もっと学校数を絞れ。もちろん私立大学も多すぎる。
— 橋下徹 (@hashimoto_lo) February 23, 2020
twitterはあくまで個人の毒吐きで論理的な主張ではないので、インフルエンサーという人たちの主張でも大きな影響を与えることはないかと思います。
YouTubeの議論も個人の毒吐きで論理的な主張ではないはtwitterと同じですが、情報量がtwitterに比べ若干多いという点と主張者の感情が伝染しやすいので、共感されやすいメディアだと思います。
大学が時代に対応しきれていないとか、大学は改革せよというような議論は多くの人々が行っています。
私は大学で教員をやっていますが、大学の制度改革については素人なので、ここでは参考文献をいくつか紹介するにとどめ、大学不要論や改革論が言われているデータを紹介したいと思います。
図1は1990年から2019年までの大学数・学生数および18歳人口の推移を示しています。
大学数は1990年の507校から786校と1.6倍、学生数は213万人から291万人と1.4倍になっています。この間の(2015年まで)の18歳の人口数は202万人から120万人と6割に減少しています。
大学の入学年齢は社会人になってからでもいいわけで18歳に限定しているわけではありません。しかし、現実として日本の場合は社会人入学が進んでいないので18歳人口が大学経営に大きな影響を与えます。
それに対して、大学数、大学生数を大幅に増やした点が大学の質が大幅に低下した要因の1つであると言われています。
改革が叫ばれつ続けて、若年齢人口が減少している中で、大学数を増やし続ける大学行政に不信感を持たれるのは当然の結果だと思います。
図1 大学数・学生数と18歳人口の推移(1990~2019年)
(資料)学校基本調査・国勢調査
図2は2019年の大学の理系・文系その他の学生数比率を示しています。大学および学生数が大幅に増加したわけですが、それはどこにいるのかといいますと、私立の文系その他が最も大きなボリュームゾーンであり、一目瞭然です。
世界各国がSTEM教育の拡充を図っている中で、戦略を立てるわけでもなく大衆的文系教育の拡充を図っているのは国際的な時代環境から逸脱していると言えます。
また、大学改革の議論の中心が国立大学を対象としていますが、国立大学の学生数は全体の17%を占めているのにすぎません。
国立大学ばかり改革が求められるのは、文部科学省のコントロールが比較的及びやすい対象なので、いじりやすいところをいじっりまわしているとも言えます。
図2 大学理系・文系その他学生数比率(2019年)
(資料)学校基本調査2019年
グローバル化やAIなどのテクノロジーの変化により、知識自体の有用性や知のコミュニティのあり方が大きく変わってきています。
その中で、大学の改革は必要であるのは確かでありますが、個人的経験や怨嗟などから議論するのではなく、また場当たり的な政策展開ではなく、今後の国家の計としてもう少し大局的な議論の展開が求められると思います。
<大学の改革に関する参考文献>