地域戦略ラボ

地域づくり・まちづくりに興味がある人、したい人のための学びのメディア

地域イノベーションの課題 その2

先日のブログで、地域イノベーションの課題として、大きく分類して
(1)イノベーションインパクトおよび地域への波及

(2)イノベーションの領域とマネジメント が考えられます、と申し上げました。

本日は(2)イノベーションの領域とマネジメント について考えてみたいと思います。

 

(2)イノベーションの領域とマネジメント
地域イノベーションは、地域内の産学官組織の連携のみならず、地域外の企業が関与することにより加速されていました

地域イノベーションは、シーズの開発からその実用化に至る研究開発から生産まで一つの地域で一貫して行われているのではなく、地域内組織で行われるフェーズもあれば地域外組織を中心に行われるフェーズもあります。

シーズとなる技術の発明者と特許の権利者、部品、最終製品の製造者はそれぞれ違う地域に立地していることが多く、また、イノベーションの担い手は企業であり、その活動は行政の領域に拘束されるものではありません。

その結果、行政の領域とイノベーション活動の領域が異なっています


地域イノベーションは地域の主体的な関与があって成功します

しかし、自治体が地域内での成果に固執しすぎると、イノベーションで必要な機能や技術を持った地域外企業を排除する可能性があります。

地域外企業の参加は、イノベーションの加速要素であるが、同時にイノベーションの成果が地域外へ漏出する原因にもなりえます。

そこに地域イノベーションにおける活動と行政の領域性におけるジレンマがあります


また、地域内でのマンネリ化と負の固定化が考えられます。

地域を行政的領域として捉えると、そのイノベーション活動は、場合によっては地域内での関係構築が優先され、地域の既得権者を中心とした設計がなされ、地域振興は既存資源の活用に拘った縮小均衡的な動きがとられることがあります。

また、地域内での担い手となりえる能力をもった企業の存在は限定的であり地域の中で同じ企業ばかりが政策の受け手となってしまうことがあります。その結果、マンネリ化つまり負の固定化(ロックイン)に陥ってしまい、革新的なイノベーションを生むことは難しくなってしまいます。

 

外部の知識は、イノベーション・プロセスの空いたピースを埋め、固定化(ロックイン)を避ける上で重要な役割を果たしています

イノベーションとは、既存の価値観を打破して、新たな価値観を創出する活動です。よって、イノベーションインパクトをより大きなものとさせるためには、地域においては、成功体験を経路依存的になぞるだけでなく、新たな知(血)を導入し地域の親和的関係を壊すことによって、新たな経路を形成していくことも必要となってきます


地域イノベーション政策のアプローチは、地域活性化のための取組みであるため地域の都道府県が主体性をもって担っていくべきものとされてきました。

地域イノベーションの一層の創出を図るのであれば、研究能力や起業活動を盛んにして地域の科学技術イノベーションのポテンシャルを上げると同時に、地方自治体のみならず国も含めて、イノベーションや産業・ビジネスに関する深い理解と戦略立案及び政策運営のキャパシティの更なる向上が必要と言えます。

 

野澤一博(2020予定)『イノベーションの空間論』一部改筆