Think Region

生き物のように成長したり、衰退したりする地域経済について考えています。

ローカル・イノベーションに関する論考が公表されました。

愛媛県の(株)キシモトという会社が骨軟化技術を活用して頭から骨までまるごと食べられる魚干物の開発を行いました。

その開発プロセス産学官の組織間学習として捉えた論考「地域における組織間学習としてのローカル・イノベーション:(株)キシモト「まるとっと」の商品開発を事例として」が愛媛大学社会共創学部の紀要で公表されました。

地域イノベーションというと大学の知識・技術の実用化というアプローチが多かったですが、本件は公設試験研究機関が中心となって、ローカルの、ローカルによる、ローカルのためのイノベーション創出の試みを取り上げてみました。

開発した会社の専務は、嚥下力が低下し、焼き魚などの食事をあきらめたお年寄りを中心に食べてもらいたいという熱い気持ちで開発されたものです。

私は研究者として知識創造の面からイノベーションにアプローチしていますが、人々の熱い気持ちが駆動力となってイノベーションが生れると言ってよいでしょう。

地方ではイノベーションに取り組もうという企業が少ないですが、本件は、特にイノベーションが少ない食品加工業におけるイノベーションであり、稀有な事例と言えます。

これは残念ながら「戦後愛媛のイノベーション30選」には選ばれていません。

 

論考の要旨は以下の通りです。

<要旨>

地域経済の活性化のためには、地域企業によりイノベーションを起こすことが求められている。本稿は、愛媛県の中小企業による魚骨軟化技術を用いた魚干物の商品開発を事例として、ローカル・イノベーションにおける組織間学習の主体間関係の構築および学習の展開を明らかにすることを目的とする。その結果、ローカル・イノベーションは、地域の中小企業が公設試験研究機関(公設試)、大学、行政機関などと連携関係を構築することにより成し遂げられており、また、機関間の学習の場は、段階により異なり、時空間的に変化していったことが明らかになった。その中心として公設試の役割は大きく、研究開発や技術支援だけでなく、学習関係構築のための信頼の媒介、学習継続のための制度整備などの役割を果たしていた。