地域戦略ラボ

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イノベーション・マネジメント

イノベーション・マネジメント』って一橋大学の『イノベーション・マネジメント入門(2001年)』が定番のようになって、その後出ていないなと思っていたら、東大の先生が書いてくれました。

野城先生って、建築の先生でイノベーションが専門でないのに大丈夫かな?と思って読んでみたが、それが逆に新鮮でよかったです。1人で、専攻も違うのに、ここまでイノベーション・マネジメントを体系化するのは単純にすごいです。

今まで、イノベーションとは経営学者が会社経営の文脈で語ることが多かったですが、本書はイノベーションという現象を俯瞰的に捉え、構造的に解析して、それを建築家ならではとうまい具合に再構築してあります。だから従来の経営学者から見たらなじめない視点かもしれません。

イノベーションを、多様な人・組織による分担協調型イノベーションとして捉える考え方に私は強く共感いたします。

著者には、英語圏諸国とわが国との間には、イノベーション・マネジメントにかんする学術の蓄積に隔絶たる差異がある、という強い問題意識があります。日本が経済大国であったのは前世紀の話だ。日本がハイテク大国であったのも前世紀の話だ。日本は古い技術観やイノベーション観にしがみついて、イノベーションの新しいパラダイムについて行っていないと、熱い思いを主張しています。私も同感です。

私の専門はこの本では第10章の「イノベーション・コミュニティ」にかかわりがあり、他の本では扱っていない、中間組織やイノベーション・ディストリクトについても言及している点が高く評価できます。

また、著者は建築家なのでデザインに励起されたイノベーション・アプローチや、社会的価値に基軸を置いたイノベーション・アプローチの章は良くまとめられており、それぞれの分野の入門として読むに適したものだと思います。