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統合的な知の創造:『フンボルトの冒険』著アンドレア・ウルフ

19世紀のプロイセンの自然地理学者アレクサンダー・フォン・フンボルトの生涯を描いた『フンボルトの冒険』(2016)を読みました。ヴィルヘルムというお兄さんがいて、からはフンボルト大学を創設した人というのは知っていたが、弟のアレクサンダーの生涯については地理学者ということ以外具体的には何も知りませんでした。 

フンボルトの冒険 自然という〈生命の網〉の発明

フンボルトの冒険 自然という〈生命の網〉の発明

 

 この本は19世紀前半の偉人たちを結び付けて、アレクサンダー・フォン・フンボルトの果たした役割と、ナポレオンからフランス革命、アメリカ南北戦争につながる同時代の大きな変化を活き活きと描いている。

まず、ゲーテとのつながりであるが、ゲーテがいなければフンボルトの科学の詩的な視点は獲得できなかっただろうし、その結果、彼が著わした本の影響もそれほど大きなものとならなかったであろう。

フンボルトは、ダーウィンとも接点があり、のちの進化論にも大きな影響を与えているし、ヘンリー・デイヴィッド・ソローの自然観にもつながっている。著者はフンボルトを現在のサステイナブルな自然観の生みの親としている。

彼の影響は政治的にも大きく、シモン・ボリバルとのつながりとラテンアメリカの独立闘争、トーマス・ジェファーソンとの交流も描かれている。

その他に、ロシア遠征ではプーシキンと接点があり、イギリスではイザムバード・キングダム・ブルネルとの交流を楽しんでいる。

彼の学問は自然地理学であるが、未開地の探検による事実の発見でとどまることなく、自然への理解と深い考察が素晴らしく、現代の細分化された学問に対するアンチテーゼとして彼の統合的な学問の構築へのアプローチは見直されるべきものであると、著者は言いたいのであろう。

歴史書は出来事の羅列を記していることが多いが、これは、それにとどまることなく彼の世界観の構築とそれの与えた影響を同時代人のつながりを通して示している。とても躍動感のある歴史書である。