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西条市における移住・定住促進ための地域ブランディング

愛媛大学社会共創学部の我がゼミ3年生は、1年間西条市における人を呼び込むための地域ブランドについて調査研究してきました。

その結果をまとめた報告書が完成いたしました。

 

愛媛県西条市は宝島社刊行の雑誌『田舎暮らしの本』で「2021年版 住みたい田舎ベストランキング」において、全部門(総合・若者世代・子育て世代・シニア世代)で全国第1位を獲得するなど、移住・定住の取組みで注目されている自治体です。

(なお、2022年版は若者世代・単身者部門のみ1位)

【2021年版 住みたい田舎ベストランキング】西条市が全部門で全国第1位に!史上初の4冠達成!

 

【報告書の概要】

学生がまとめた報告書の目次は以下の通りです。

第1章 はじめに    1
第2章 先行研究と研究対象地の概要    2
1.課題図書『プレイス・ブランディング』における論点の整理    2
2.西条市の概要    4
3.地域経済分析システム(RESAS)による分析    6
4.ブランディングと定住促進に関連する施策・取り組み    27
第3章 アンケート調査結果    54
第4章 西条市地域ブランドに関するSWOT分析    67
第5章 西条市ブランディングに関する特徴と課題    69
第6章 西条市ブランディングに関する方向性の検討    71
第7章 おわりに    74
謝辞    74
参考資料    75
後記    79

 

西条市における定住促進に関する施策・取組み

西条市における移住・定住政策)

西条市における主な移住・定住施策として、以下の施策が挙げられます。

西条市空き家バンク
・オンライン移住相談
・お試し移住用住宅「リブイン西条ハウス」
西条市移住者住宅改修支援事業

 

施策の内容としては他の市町村と大きな差はないですが、移住検討者に親身に寄り添い対応することが特徴としてあげられます。

移住推進課 - 西条市ホームページ

 

もう一つの特徴として、西条市シティプロモーションの主な目的は「移住・定住」である点があります。

通常、市役所のシティプロモーション業務は地域のイメージを向上させる動画を作成したり、市民向け冊子を刊行することも主な業務としている自治体が多いですが、西条市松山市などと比べ大きくないため、西条市は戦略的にシティープロモーションの目的を移住・定住促進に絞ってプロモーションを行っております。

 

西条市では、西条市のファンコミュニティとして”LOVE SAIJO”を運営しています。LOVE SAIJOのホームページでは移住者のサポート情報を積極的に提供し、移住者の不安を軽減し、地域に溶け込むことを手助けしています。

 

このLOVE SAIJOは、移住者のみならず、市外に転居した人との関係継続を図る媒体ともなっており、市の関係人口のつなぎ止めにも役立っています。

 

www.lovesaijo.com

 

また西条市では、移住者のターゲットを若者・家族と定めており、このように目的やターゲットを明確にすることが移住者増加という成果につながっていると考えられます。

 

西条市における移住・定住の実績)

西条市は近年移住・定住施策を熱心に展開しており、相談件数が増加しております。

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それと同時に移住者数も年々増加しており、近年県外からの増加者数が目立っております。

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令和2年度の西条市への移住者の年代別の構成は、20歳未満が15%、20代が32%、30代が21%、40代が12%と、全体の約8割を40代以下が占めておりました。また、世帯状況は単身世帯と家族世帯がそれぞれ半数ずつでした。

 

アンケート調査結果

(回答者属性) 調査対象:西条市在住の10代以上の人
        調査方法:googleフォーム
        実施期間:2021年7月21日(水)~2021年9月30日(木)
        回収回答件数:131件
        有効回答件数:128件

 

(生活に関する満足度・重要度)

アンケートでは、生活に関して自然、利便性、まちづくりなどに関する25の質問を立て、満足度、重要と感じているものについて、そう思う(4点)、どちらかというとそう思わない(3点)、どちらかというとそう思わない(2点)、思わない(1点)という4段階で評価してもらい、平均値を算出しました。

 

西条市民が西条市で生活する上で満足、重要視している項目について調査した結果、全体では自然の豊かさが満足度・重要度ともに最も高く、高等教育機関の充実度が満足度・重要度ともに最も低いということがわかりました。

 

満足度×重要度分析からは、改善すべき点として、全体では、働く場の充実度・医療機関の充実度・買い物の利便性が挙げられます。

 

男性では、働く場の充実度・市外への交通アクセス(道路・鉄道)・娯楽施設の充実度・市街地の活性化、活気・美しい街並み・人の交流のしやすさ・公共交通機関の充実度、女性では働く場の充実度・市外への交通アクセス(道路・鉄道)・福祉サービス(介護・障がい者対応)の充実度・交通安全対策の充実があることが分かりました。

 

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(市外にアピールしたいこと)

アンケート西条市で生活する上で市外の人にアピールしたい西条市の魅力を3つまで回答してもらったものです。最も多い項目は、「自然の豊かさ」で、2番目に「祭り」、3番目に「穏やかな気候」という結果となりました。

 

なお、「住みたい田舎ランキング全国1位」は4位につけており、移住施策がマスコミで取り上げられるなどして、それが市民のシビックブライドを醸成していると言えます。

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西条市の人をよびこむための地域ブランドに関するSWOT分析

西条市には自然の豊かさや移住政策が充実しているなどの強み、突出する地域ブランドが少なく、観光要素の横のつながりが薄いなどの弱み、様々なメディアへの露出、田舎志向への転換などの機会、類似自治体の存在や自然災害や南海トラフなどの脅威の4つに分類することができます。

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西条市ブランディングに関する特徴と課題

西条市に特徴として、自然の豊かさ盛んな農工業充実した移住施策が挙げられます。

また、課題としては突出した地域ブランドが少ないことが挙げられます。

 

(人を呼び込むためのブランドとは何か)

まずは交流人口の獲得から始まります。交流人口は、イベントや観光を通してその地域を知るきっかけにしてもらう段階です。地域の強みをしっかりと分析しそこでしかできない体験を提供し他地域との差別化を行うことが重要です。

 

関係人口は、その地域に継続的に訪れてその地域にしかない、「かけがいのない地域らしさ」を感じてもらう段階です。地域住民との交流をその地域への愛着や定住へのきっかけに繋げることが重要です。

 

そして、最後の段階が、定住人口です。その地域に長く住み続けてもらう必要があるため、子育て支援などをしっかりと行い、住みやすい地域にしていくことが重要となります。

 

このようなプロセスを踏むことで、地域への愛着を深めながらその地域へ人を呼び込むことができると考えます。

 

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西条市ブランディングに関する方向性の検討

(目指すべき地域像)

 西条市に人を呼び込むために、前章で述べた地域ブランドに必要な要素を踏まえながら、「自然」・「農」・「食」を軸とした地域ブランディングを考えます。

 

「自然」と「農」については、我々が実施した西条市民に対するアンケート調査でも、多くの市民が市のアピールポイントとして挙げていたことから重視するべきと考えます。

 

また、「食」については、農業が盛んで食材自体は豊富にあるにも関わらず、他の地域と比較して突出する特産品となるものがないため、食材を生かす方法が必要です。

 

以上のことから、「自然」と「農」を「食」と結びつけて、西条市の人々と市外の人々の交流を盛んにして交流人口、関係人口を増やすことが必要であると考えます。

 

(具体的な取組み策)

西条市では、自然や農業などの強みがありますが、知名度が低い、強力な観光資源が少ないなどの課題もありました。

そこで、西条市を知ってもらうこと、来てもらうこと、関係を築いてもらうことが必要だと考え、話題になるようなイベントの開催が効果的であると考えました。

報告書では、西条市が人を呼び込むために強いブランドを形成するための施策として4つの取組みを提案させていただきました。

「Let’sファームステイ~繋げよう、西条市内外の和~」

「競争!グルメサバイバル~楽しめ西条の食~」

「シェフの卵必見!1weekガストロノミー」

「うちぬき水かけ祭り~学びを添えて~」

 

調査研究の進め方

コロナ禍の中で行った調査活動で、大学に集まることもままならなかったですが、PBLとして、文献調査、RESAS調査、フィールドワーク、アンケート調査、インタビュー調査等様々な調査に取組みました。最後に、西条市ブランディングに関して提案をさせていただきました。

 

西条市に対しては、中間と最終報告のプレゼンを行い、市役所の現役の担当者からフィードバックを頂きました。

 

調査を担当したのは6名。西条市出身の者はいませんでした。文献、データ分析、アンケート、ヒアリングと様々なアプローチから、「地域とはどういうものなのか」改めて問うことで、地域に対する理解を深められたと思います。

 

課題図書

なお、調査の開始時に課題図書として輪読したのは、電通/若林宏保『プレイス・ブランディング』です。

※報告書を希望の方

もし、この学生が作成した報告書にご興味のある方がいらっしゃいましたらPDFを送付いたします。ブログ(右の)問い合わせ先欄に氏名、Emailアドレスを記入の上、報告書希望の旨をお伝えください。

 

 

 (2022年2月25日作成)