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平成30年間に製造業はどのように変化したか(都道府県編)

前回に引き続きまして、平成の30年間においての製造業の変化を都道府県別に見ていきます。

 

都道府県別の事業所数、従事者数、出荷額、付加価値額の変化 

 平成期における都道府県別の製造業の変化を見ると、事業所数は47都道府県すべてで減少しています。従事者集では、滋賀県沖縄県以外の都道府県で減少していますが、事業所、従事者数は全国的に減少していると言っても良いでしょう。

製造品出荷額では、東京都、埼玉県、神奈川県、大阪府奈良県の大都市圏の他に、秋田県鳥取県で減少しています。

付加価値額では、増加している地域と減少している地域が混在しており、東北、北関東、東海、九州地方が増加傾向にあります。

 

表1 都道府県別事業所数・従事者数・製造品出荷額・付加価値額の変化(1989年~2018年)

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都道府県別に見た量的変化

 都道府県別の量的変化を、製造品出荷額を通して見ていきます。

横軸に2018年の従事者1人当たりの製造品出荷額を示し、都道府県別の労働生産性の高さを見ます。縦軸に平成期における製造品出荷額の増減率から成長性を見ます。それを全国の平均値を中心に四つに分割し、労働生産性が高く成長性の高い第Ⅰ象限を「発展」地域とします。

労働生産性は高くないが成長性が高い第Ⅱ象限を「成長」地域とします。

労働生産性が低く成長性も低い第Ⅲ象限を「縮小」地域とします。

労働生産性が高いが成長性が低い第Ⅳ象限を「停滞」地域とします。分類は以下の通りです。


第Ⅰ象限「発展」:山口、大分、千葉、愛知、愛媛、岡山、三重、和歌山、福岡、兵庫

(成長して労働生産性をあげた地域です。)
第Ⅱ象限「成長」:香川、宮城、徳島、佐賀、福島、長崎、岩手、青森、宮崎、福井、島根、熊本、石川、鹿児島、山形、新潟、高知、秋田

(成長したが元々生産性が低かったので、まだ相対的に生産性が低い地域です。)
第Ⅲ象限「縮小」:静岡、京都、大阪、北海道、山梨、埼玉、奈良、富山、長野、東京、岐阜、鳥取、沖縄

(元々生産性は低く、成長もしなかった地域です。)
第Ⅳ象限「停滞」:神奈川、滋賀、茨城、広島、栃木、群馬

(元々は生産性は高かったが、成長していない地域です。)

 

図1 都道府県別従事者1人当たりの製造品出荷額(2018年)と製造品出荷額の変化(1989年~2018年)

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都道府県別に見た質的変化

 都道府県別の質的変化を、付加価値額を通して見ていきます。横軸に2018年の従事者1人当たりの付加価値額を示し、都道府県別の付加価値性の高さを見ます。

縦軸に平成期における付加価値額の増減率から高付加価値化を見ます。それを全国の平均値を中心に四つに分割し、付加価値性が高く高付加価値化の高い第Ⅰ象限を「発展」地域とします。

付加価値性は高くないが高付加価値化が高い第Ⅱ象限を「成長」地域とします。

付加価値性が低く高付加価値化も低い第Ⅲ象限を「縮小」地域とします。

付加価値性が高いが高付加価値化が低い第Ⅳ象限を「停滞」地域とします。分類は以下の通りです。

 

第Ⅰ象限「発展」:山口、徳島、三重、茨城、和歌山、愛知、京都、栃木、静岡、群馬、山梨 (高付加価値化に成功し、高付加価値なものを製造している地域です。)
第Ⅱ象限「成長」:愛媛、佐賀、宮城、長崎、香川、長野、福島、宮崎、石川、熊本、福井、山形、島根、新潟、鹿児島、青森、岩手、高知、秋田、鳥取 (高付加価値化を図ったが、まだ相対的に付加価値が高いとは言えない地域です。)
第Ⅲ象限「縮小」:広島、岡山、大阪、東京、埼玉、福岡、富山、奈良、岐阜、北海道、沖縄 (元々、高付加価値とも言えず、高付加価値化に成功したとも言えない地域です。)
第Ⅳ象限「停滞」:滋賀、大分、千葉、神奈川、兵庫 (高付加価値なものを製造しているが高付加価値化が停滞してしまっている地域です。)

 

図2 都道府県別従事者1人当たりの付加価値額(2018年)と付加価値額の変化
(1989年~2018年)

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都道府県別に見た製造業の変化の特徴

②で製造業の量的変化を、③で質的変化を見てきました。そこで、量的変化と質的変化の2軸から都道府県の製造業がどのように変化したのかを「発展」「成長」「縮小」「停滞」の4つに分類し、16分割のマトリクスに整理しました。

都道府県の中で、量・質ともに製造業が発展した地域は輸送用機械器具製造業、や化学工業などが盛んな山口県、愛知県、三重県和歌山県の4県でした。その他に、愛媛県徳島県香川県宮城県佐賀県福島県長崎県岩手県青森県、宮崎県、福井県島根県熊本県、石川県、鹿児島県、新潟県高知県秋田県は製造業が相対的に成長している地域と言えます。しかし、これらの地域は元々それほど大規模な工場集積がなかった地域が資本集約的な工場の集積が進んだ結果、成長したことが想定される。

一方、神奈川県、滋賀県広島県大阪府、北海道、埼玉県、奈良県富山県、東京都、岐阜県沖縄県は平成の30年間において製造業を量的にも質的にも相対的に成長させることができなかった停滞・縮小地域と言えます。

また、大分県、千葉県、兵庫県岡山県、福岡県は、労働生産性の向上により量的には改善されていますが、付加価値の改善は図られていません。

更に、茨城県、栃木県、群馬県静岡県京都府山梨県、長野県、鳥取県は相対的な労働生産性の改善は顕著ではないが、高付加価値化は図られた地域と言えます。

 

表2 都道府県別製造業の変化の特徴

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