新しい地域のガバナンスの”カタチ”について思考中です。
第2期まち・ひと・しごと総合戦略がはじまりましたが(自治体レベルでは総合戦略の策定真っ只中ですが)、それはそれとして、地方の今後を考えていく上で新しい地域のガバナンスの在り方を考えなければいけないと思っています。
なぜなら、住民ニーズの多様化、急激な時代変化、行政のリソース不足など公共を地方自治体だけが担う時代ではなくなってきているからです。
よく言われることですが、公務員の給料が高いとか、公務員の数が多すぎるから減らせとかいう批判は、単なる公務員いじめ、ポピュリズムだと思います。
確かに、現在の非効率的な事務しごととしてのお役所仕事がそれでいいわけではありません。テクノロジーを利用しながら現在のお役所仕事は合理的、効率的に変えていく必要は当然あります。
例えばまちづくりの取組みも、行政が役立たないとか批判しながらNPOとかがやっているプロジェクトが多いですが、組織力・リソースのある地方自治体と協力してその能力を発揮できれば、さらに良いわけです。
公務員の仕事もより地域の課題発見→課題解決型のようなクリエイティブな仕事に変わっていくべきでしょう。
政府が使用する”新しい公共”という言葉は、行政ではなくNPOや民間でしっかり頑張れと言っているようで、また、それをPPPとかPFIを指すようで、あまり好きな言葉ではないです。しかし、概念としては新しい公共性の構築が必要であり、新しい(オルタナティブな)”新しい公共”が必要だと考えている。
私はここ数年、ヨーロッパのいくつかの自治体を回っていますが、地域が新しい時代に向けてより良い地域(市民)社会を築いていこうという動きが見られます。
日本は欧米のような市民社会ではないし、民主主義の考え方が違うので、欧米の地方自治体がそのまま当てはまるわけでありません。
しかし、日本の地域社会においても、ただ人口減少や急激なグローバル化・デジタル化におびえるだけでなく、より暮らしやすい地域社会を築くために、新たな地域(市民)社会のためのガバナンスを構想していくことは必要だと考えます。
地方のガバナンスについては誰が変えるのか?それは地方自治体みずからでは不可能です。それは、馬力だけはある超変わり者の首長である場合もありますが、やはり市民自体が変えていくしかないでしょう。
今、私に新しい(オルタナティブな)”新しい公共”のイメージがあるわけではありません。今後何かしらのアウトプットができればと考えています。
最近新しい”新しい公共”を考える上で参考にした図書を以下に紹介します。
①若林恵(2019)『NEXT GENERATION GOVERNMENT 次世代ガバメント 小さくて大きい政府のつくり方』黒鳥社
元『Wired』編集長の若林氏の次世代のガバメントについて考察した本です。なぜテック系雑誌元編集長がガバメントについてまとめているのか? 本人に聞いたわけではないですが、欧米ではシビックエコノミーや、スマートシティ、行政のデジタル化が推進されており、それら分けることができない大きな潮流に関心を持たれたのかと思います。本中には私も関心のあるデンマークの取組みなども紹介されています。
今後の公共のありかたについて考えてみたい人に特におすすめの本です。
ただ、個人的にはガバメントではなくガバナンスという用語を使っていただきたかったと思います。
NEXT GENERATION GOVERNMENT 次世代ガバメント 小さくて大きい政府のつくり方 (日経MOOK)
- 作者:
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2019/12/09
- メディア: ムック
② 曽我謙悟(2019)『日本の地方政府 1700自治体の実態と課題』中央公論新社
京都大学の行政学の先生が執筆した地方自治体の現状と今後について考察した本です。タイトルが”地方自治体”ではなく自ら決定する権限をもつという意味において”地方政府”としたところがミソだと思います。日本の自治体の実体を知る教科書として良い本だと思います。
地域のガバナンスは、中央政府や地域住民との関係、グローバル化の影響など様々な変数の上で成り立つものなので、国のガバナンスを考えるより複雑で理解が難しいものと言えます。