地域戦略ラボ

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イノベーションのためのコミュニティとは

イノベーションのネットワークは、それを構成する企業や大学およびそれらに所属する人々が特定の目的や言語(コード)、文脈を共有しコミュニケーションを密に行っていくことでイノベーションのコミュニティへと発展していきます。

コミュニティとは、地域共同体と捉えられてくることが多かったが、イノベーションのコミュニティとは、必ずしもローカル・コミュニティのように地域のメンバー間で関係が維持される地域社会を意味するものではなく、地域のメンバーを越えた関係を構築していきます。

イノベーション創出のプロセスにおいて必要とする資源を広範囲から臨機応変に集め、組み合わされていく。そのプロセスにおいて知識創造をおこなう組織と組織の関係性の集合としてコミュニティが構築される。


イノベーションのコミュニティでは開発者同士だけではなくユーザーとの関りが重要である。イノベーションでは、既存顧客を先導し、そして潜在的な新しい顧客を見つけ出すことだけでなく、ユーザーのニーズを理解し、先導的なユーザーを取り込むことによって生まれるユーザー・イノベーションがあります。

通常、ユーザーは、製品の改善点について深い洞察をもっているので、イノベーションの実験の重要な参加者となりえる。新製品・新サービス開発における新しいアイデアは、突然浮かぶのではなく市場の要求に対して多くの実験と繰り返しの試行錯誤の結果生まれるものであります。

イノベーションの中には、分析と行動のフィードバックとしての効果的な学習と、組織・部門を越えた情報・知識の効率的な統合を同時に実現させていくことがポイントです。
そのユーザー・イノベーションには2つのアプローチがあります。

一つは、既存市場において具体的なユーザーに対して市場のニーズを把握するものであり、テスト販売などがあげられる。そのためのコミュニティはテストベッドと言われることが多です。

もう一つは、企業の境界を越えて消費者だけでなく、供給業者、時にはライバル企業などと関係を構築し、潜在的なニーズを探索し、試作品などをユーザーや消費者に実際に使用してもらいながら作り込んでいくアプローチであり、これを発展させたモデルとしてリビングラボ です。リビングラボとは、課題を顕在化させて解決策を検討する物理的空間を含んだコミュニティであり、ユーザーを中心としてステークホルダー間のイノベーション活動のための実践的なコミュニティを意味します。


イノベーションは、知識や製品・サービスの創出でとどまるものではなく、それらが実際に使用してみるなど社会実装されてイノベーションとして結実するものです。

よって、製品やサービスとして展開されるその前に試作や試行を積み重ねる必要があります。

つまり、イノベーションの社会化と言えます。そのため、製品・サービスの試作、試行がされる実験を行う物理的空間が必要されている。テストベッドやリビングラボでは、知識やイノベーションの創造の基本的要素となる人間活動を組織化する必要があり、その時、協力企業やユーザー、ステークホルダーなどが集う、実証フィールドとしての地理的空間が不可欠なものとなります。

 

野澤一博(2020予定)『イノベーションの空間論』一部改筆