科学技術イノベーション政策に地政学的視点が必要である・
イノベーションの場所を巡る競争は、地域の問題ではなく国の問題である。
各国の科学技術イノベーションの振興は、科学技術における地理的中心の構築をめぐる競争でもある。それに伴い競争力を持った産業を有する国の顔ぶれも変遷してきた。
その産業競争力の変遷は技術力に裏打ちされたものであり、科学技術のヘゲモニー(覇権)を握ることが国や地域の盛衰を決すると言ってもよい(薬師寺1989)。
現在のイノベーションのためのプラットフォームの構築競争は、知識資本主義における地政学的な動きと言える(Moisio 2018)。
そして、科学技術はイノベーションと強く結びつくことにより、国富の創出につながる。そのため、科学技術とナショナリズムの結びつきがつよくなっている。これらの競争はイノベーションの拠点構築及び圏域の競争であると同時に国家間の競争となっている。
イノベーションは単なる技術開発ではなく、経済的・社会的価値を生むために多様な知識、人材、ノウハウ、資金などを動員する総力戦である。
イノベーションは、知識を創造・統合・展開させるプロセスにおいて、知識を迅速に創造するために知識を創造するプレイヤーを効果的に調達し、関係を構築させる必要がある。
その拠点はイノベーションの創出を図る企業や研究組織が集うプラットフォームとなっている。プラットフォームとは単なるイノベーション・コミュニティを指すものではない。継続的な仲間集め、つまり囲い込みを行うことで、経済圏の創出を図るものである。
プラットフォームでは、仲間づくりを行い、技術の標準化を図り、ひいては科学技術のヘゲモニー(覇権)を掌握することを目指すものである。
野澤一博(2020予定)『イノベーションの空間論』(一部改筆)
<テクノ地政学を考える書籍>
米国と中国のハイテクスタートアップを紹介してます。あまり米中の地政学的対立を煽ってはいません。企業動向を知りたければこの本が良い。
米国企業であるGAFAの寡占は西側諸国にとって大きな問題であるが、企業分割によりその力を剥いでしまうと、中国企業にやられてしまうでしょう。
表題は『テクノロジー思考』となっているが、内容は米国VS中国です。
古典と言えるでしょう。でもテクノ地政学については薬師寺先生が1989年に提言しています。