科学技術に場所は必要である
科学とは、真理の追究であり、文脈に依存しない普遍的かつ客観的な知識であるとされている。科学者は、知識に関して普遍性を好み、特殊性を忌み嫌う傾向にあると言える。
しかし、科学が生れる空間とは特定の場所(ローカル)である。科学という知識が生れるためには、経済力を持ったパトロンがおり、創造的な空気がある特定な場所という空間的要素が必要である。
つまり、科学に国境はないと言われるが、歴史的に見れば、科学は特定の場所で生まれている。
第二次世界戦後、アメリカでは、科学は基礎研究を通じて国家と社会の進歩・発展に貢献すべきである、とされてきた。それ以降、各国は国家計画に基づき科学技術およびイノベーションの推進を図っている。
国家がパトロンとなり科学技術に多額の資金を投入しているのは、科学技術により国富が創造されるからであり、科学技術が経済成長や国威発揚のための手段となっていった。
科学は技術と結びつき科学技術となることで、主に政府から多額の資金を集めることになった。
さらに、近年の緊縮財政の折り、政府は科学技術予算を確保するために政策としてイノベーションとの結びつきを強化していった 。そのことにより、科学は、イノベーションの手段と位置づけられるようになったと言える。
つまり、科学は技術と結びつき科学技術となることより社会的な有用性が問われるようになっていき、更にイノベーションと結びつき科学技術イノベーションとなることで経済的な有益性が問われるようになっていったと言える。
野澤一博(2020予定)『イノベーションの空間論』一部改筆