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北陸の炭素繊維複合材CFRPの取組みについて電子ジャーナルに公表しました。

石川県と福井県を中心として行われている炭素繊維複合材開発の取組みについて日本地理学会の電子ジャーナルE-Journal GEOに「北陸地域における炭素繊維複合材(CFRP)の実用化の取組みと政策展開」という題名で公表しました。

電子ジャーナルなので、誰でもアクセスできますので、興味のある方は下記URLにアクセスしてダウンロードしてみてください。

 

繊維産地として名高い北陸地方では、長期停滞している繊維産業の振興として、石川県は金沢工業大学で、福井県福井県工業技術センターが中心となって炭素繊維複合材の開発が進められています。 

2つの県とも研究開発の成果が表れて製品が生れています。ただし、繊維産業としてのノウハウを活かせるのは、プリプレグシートなどの中間財を創るまでで、成形品を創る段階では、樹脂などの成形技術が中心となるので、繊維産業で培った技術はメリットとなりません。また、成形品が自動車部品や航空機部品として展開する際は、繊維産地として高度化するというよりか、自動車や航空機のサプライチェーンの一部になってしまう可能性もあります。

また、今回の取組みは、石川県、福井県、両県とも独自に展開しており、両県をまたがった取組みとして相乗効果を発揮していないと言える状況です。県でこじんまりするのではなく、相互のリソースを融通し合って展開する必要があります。

さらに、日本の炭素繊維複合材産業は、決して国際競争力が高いわけではありません。確かに、炭素繊維東レと中心としたメーカーが世界で60%程度のシェアを持っていますが、国内生産は30%であり、また、炭素繊維複合材としての展開も航空機同体などのみで、成長市場である自動車や風力発電機のブレードなどの展開はほとんど見られなく、ヨーロッパに後れを取っています。また、中国の追い上げも急であり、日本は中国などと競争しながらキャッチアップを図っていくというのが、現状と言えます。

 

 

【抄録】地域経済活性化のために,新たな技術を導入するなどして,競争力を失った地域産業の再生を図る取組みが各地で行われている.北陸地方では繊維産業の競争力強化のために,県が中心となり国の助成事業を活用し,炭素繊維複合材の開発を積極的に行っている.本稿では,北陸地域で展開されている炭素繊維複合材開発の状況と政策展開を明らかにし,産地企業の新技術を用いた実用化の取組みについて分析する.炭素繊維複合材に関して,石川県では大学を中心に研究開発が行われており,企業間のつながりもあり実用化の動きに広がりが見られた.一方,福井県ではコア技術をもとに公設試が中心となり,実用化の展開が図られていた.炭素繊維複合材の開発は,従来産業である繊維産業産地の高度化というより,将来,航空機や自動車部品という全く違った産業のサプライチェーンの一部となる可能性がある。