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大学の地域連携についての論文をまとめました。

12月に発刊された産学連携学会誌では【特集 大学の地域連携マネジメント】の編集を担当し、個人としては「大学の地域連携の活動領域と課題」という論文で日本における大学の地域連携活動における現状と課題についてまとめた。

内容としては、大学の地域連携活動は文科省トップダウンで進められて、十分な議論が重ねられてきたわけではなかった現状に対し、アンケート調査結果を中心に大学の地域連携の取組状況を明らかにし、大学の地域連携の活動現況と課題を抽出した。

大学等が挙げる地域連携活動の課題としては、教職員や資金の不足との指摘が多かった。今後、更に地域連携活動を展開するためには、人的・予算的なリソースの確保が重要な課題であるという状況である。

大学の使命として、第1に教育、第2に研究、第3に地域貢献として挙げられる。法律的にも大学に第3の使命として社会・地域貢献の機能強化を図るようにとされている。文科省の運営費交付金が削減される中、特段金銭的な処置もなく(*COCという見せ金はあるが…)組織改革を迫っているのが現状である。つまり、リソースが増えない中で、教育、研究を削減できない上で新たな義務が付加され、現場の負担感が大きいのが現状である。

拙稿の第1の主張は、大学の地域連携活動は、第3の使命として地域連携の取組を単体として捉えるのではなく、研究・教育につながるシステムとして捉え、大学の組織特性や地域環境・ニーズに合わせ支援していくことが必要であるという点である(下図参照)。決して新しい主張ではないが、大学の地域連携活動は教育・研究と結び付けて展開することにより意味をなすものである(現場の一担当教員としては理想通りにはならない現実を実感していますが…)。 

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 イギリスのリンカーン大学のチャールズ教授も言っていたが、レベルの高い研究、レベルの高い研究者・生徒があってこそ、きちんとした地域連携ができると。よくあまり特色のない大学の地域連携活動のみを取り上げ「地域連携頑張ってます!」と宣伝している大学があるが、それでは地域が求める連携活動はできないと。確かにそうだと思う。

第2の主張は、特に国立大学に関してであるが、最近の大学の地域貢献は大学の活動領域を狭めているという点である。1949年に各地に新制国立大学が設立された時、旧国立の学校のみならず、県立の学校を統合して国立大学を新設した。これらを天野郁夫先生は大学の”国立化”と呼んでいる。そしてアンケート調査で明らかになったことであるが、国立大学の教員は県域を越えた活動としていたが、今回のCOC事業では地域を県と定義しているため、今後の国立大学の教員の地域連携活動はおのずと県域が中心となるであろう。これを国立大学の地域化・県域化と名付けた。

今回の学会誌『産学連携学』の特集号では拙稿の他に、イギリスにおける大学の地域連携に関する議論や、岩手大学高知大学福井大学信州大学と地域連携活動が盛んな大学の取り組みについて紹介してます。