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地方国立大学における国際ネットワークの形成

熊本大学におけるマグネシウム合金の研究開発を取り上げ、地域貢献を標榜する地方国立大学においても、世界的な研究を行い、国際的なネットワークを構築している事例を文部科学省科学技術・学術政策政策研究所の機関誌で紹介しました。

[概要]

地域の大学の中には、国際的に見ても卓越した研究を行い、優れた技術シーズを持つ大学がある。熊本大学におけるマグネシウム合金研究もそのうちの一つである。熊本大学大学院自然科学研究科の河村能人教授は自身の科学研究費助成事業(科研費)でマグネシウム合金の研究に着手し、マグネシウムの欠点である機械特性や発火しやすいといった問題を克服した合金の開発に成功した。

更に、県内企業との連携を中心にその実用化を進めると、同時に基礎研究を深耕し、実用化研究と基礎研究を相乗的に発展させている。現在では、国際的な研究センターを有し、国内外の大学や企業と共同研究を行うなどネットワークが広がっている。

研究開発を発展させるには、こうした多様な機関との連携が必要である。そのネットワークの広がりは、センターという拠点で組織的な研究を行うことで、卓越性が認識されたことによると言える。

地方国立大学の多くは大学の機能強化の方向として“地域貢献型”を選択したが、それは地域のみに閉じられた大学になることを意味するのではない。研究の卓越性と地域貢献は矛盾するものではない。

熊本大学マグネシウム合金研究の事例は、“地域貢献型”大学における研究と地域貢献の両立の一つのモデルとなる。

 

日本の大学における科学技術研究力が低下していることは報道などで指摘されていることで、特に地方国立大学では、研究費、人材、設備が不足していて、また研究者は研究以外の業務負担が多く研究する上で多くの困難を抱えている状況です。

 

その様な中で、熊本大学の河村能人教授のマグネシウム合金研究は卓越した研究で、国際的にも広くネットワークを築き、基礎研究から応用研究まで行っています。熊本大学は旧6医科大学グループ(他に千葉大学新潟大学金沢大学岡山大学長崎大学)に属しており、旧帝大に次ぐ伝統ある大学です。そのレベルの大学が、研究大学として生き残るのか、単に地域と連携する大学になってしまうのか、日本の科学技術研究力維持の分水嶺ではないかと思います。

指定国立大学は今後も国立大学として生き残っていくのでしょうが、非指定国立大学は今後、非国立大学になっていくのでしょうか?

 

愛媛大学にも、熊本大学マグネシウム合金に負けないぐらい国際的に評価されている入舩徹男教授の「ヒメダイヤ」という素晴らしい研究成果があることを付け加えさせていただきます。