コミュニティ開発としてのシビックエコノミー
最近、シビックエコノミーという言葉を耳にする。社会の課題に向き合い、事業性を考えながら社会に役立つ解決策を図るような活動を指すことが多い。しかし、それではソーシャルビジネスと同じではないかと思う。
そこで、『日本のシビックエコノミー』という本では、「ソーシャルビジネスという言葉からは、主に社会的問題(社会的排除、地域社会、環境、開発援助など)の解決に事業性をもってあたるという主体の経済的自立の側面が想起されるのに対し、シビックエコノミーは市民による生産・流通・消費・蓄積のプロセスと社会的関係の新しいあり方、つまり総体的な循環システムの側面に着目した言葉と捉えられる」としている。
『シビックエコノミー』では、シビックエコノミーとは「オープンで社会的な経済」「ウェブ2.0の文化と、市民活動を通じて社会貢献を行う決意とを融合させた経済」であり、「従来の明確に区別された市民社会、市場、政府の各部門から、革新的な方法を融合させる人、ベンチャー、行動からなる経済」と定義している。
あえて両者の違いを線引きすると、ソーシャルビジネスは事業という側面が強いのに対し、シビックエコノミーはコミュニティの活性化につながるより公共性が高い取り組みを指すことが多いといえる。
『日本のシビックミー』の中には、先日訪問した岩手県紫波町のオガールプロジェクトが事例として紹介されていた。また、しまんと新聞についても取り上げられており、私の授業で紹介している。
私個人としては、地域を創生する”学習”に関心を持っている。一昨年長野県の飯田市で地域における様々な学習について事例調査を行った。その際、原社長のおひさま進歩エネルギーにも行って、事業の仕組みについてヒアリングした。
「地域経済論」の授業では内発的発展論について講義する回もあり、学生の関心が比較的高いトピックである。地域経済論を教えていて時々アンコンシャスになるのは、地域経済論が国民経済の縮小版として地域経済を捉えており、地域の発展とはGDPの増加を意味するとしていることである。
地域の本音としては、経済発展はそれほど望んでいないという現実がある。経済発展よりかは持続性が喫緊の課題である。その中で、シビックエコノミーの総体的循環システムの考え方は、地域の持続性をはかる内発的発展モデルとの融合が可能となるであろう。
- 作者: 江口晋太朗,太田佳織,岡部友彦,小西智都子,二橋彩乃,紫牟田伸子,フィルムアート社編集部
- 出版社/メーカー: フィルムアート社
- 発売日: 2016/02/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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