地域戦略ラボ

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クラスター政策再考

今回参加の学会は、クラスター政策がテーマの学会でした。学会の最終日のセッションのカテゴリーとしては、ラーニング・マネジメント、ガバナンス、評価の3本でした。

ラーニングについては、如何に産学官の関係を構築するか、企業と企業のマッチングをするかなどは日本と共通な話題ですが、トリプルヘリックスに市民社会を入れるなどはヨーロッパ的だと思います。

ガバナンスについては、ヨーロッパはEUがあり、クラスター開発を株式会社が行っているなど複雑な構造をしている背景から、正当性(民主制)と説明責任についてしつこく議論しています。

評価については、やはり一つの指標などなく、如何に複数の指標を決めて集めてくるのかという話題のようでした。

ヨーロッパではオランダ、イギリス、イタリア、フィンランドではクラスター政策をとっていないそうです。そこでなぜブレインポートは成功しているのかといえば、それは地域のクラスター推進機関が優れているからのようです。オランダ政府は研究開発などで支援していますが、ブレインポートのマネジメント自体は地元の産学官の組織でつくられたブレインポート・ディベロップメントで行っています。

日本もクラスター政策はもはや展開していないですが、オランダのように地域のクラスター開発会社に任せればいいではないかという結論にはならないと思います。中央政府の関与は必要だと思います。それは、地域開発会社(公社)の戦略立案・運営能力が全く違うからです。オランダではクラスター政策以前から地域開発を行っていた組織が各地にあり、そのノウハウ・経験が蓄積されており、ビジネスのプロが戦略を立ててマネジメントをしています。クラスター政策に関しても特にヨーロッパ圏内での勉強会が盛んで、ベストプラクティスの蓄積や研修もいろいろと行われています。また、評価のためのデータ収集がきちんと行われています。ヨーロッパの最近の地域政策の主軸であるスマート・スペシャリゼーション戦略も複雑すぎて日本の組織では運営できないでしょう。

日本の地域産業振興機関でも職員が、地域振興のため一生懸命忙しく働いていることは知っております。ただ、日本の機関は中央からの補助金をいかに獲得するかがメイン事業であり、地域独自の戦略立案・マネジメント能力を向上させる機会があまりなかったと言えます(例外地域もありますが)。中央と地域の関係がヨーロッパとは違い、日本はいろいろな意味で地域の自立性がまだ低い、という根本的な条件が違うと思います。

学術面では、マネジメントに関心の中心が移っていると思います。学会2日目にDominique ForayとRon Boschmaがスピーカーで来ていましたが、クラスターから如何に次の新しい産業の芽を生み出すか、そのための多様性の重要性などについて議論していました。